こんにちは、スケです。
「三体」という超絶に面白い、中国生まれのSF小説があります。全部で三部作なんですけど、2019年の6月ごろに第一部の邦訳が出版され、僕もそれを読んでました。
それが面白いこと面白いこと。
ひっさびさに脳内麻薬分泌系小説に出会えました。
あまりに良かったので、じゃあ続きを読もうと、第二部を読もうとしたら、「第二部は2020年発売予定です」とのことで、スケ少年はそんな先まで待てませんでした。
ところが、洋書版はとっくにすべて翻訳されてるらしく、じゃあ洋書で読んでやんよって感じですね。
第二部の感想は↓に書きました。
中国で超人気のSF小説「三体」の第三巻、「死神永生(The Death’s End)」の洋書版を読んだので感想
そして今回は、「三体」シリーズ最終巻、「死神永生(The Death’s End)」の洋書版を読んだので感想を書きます。
もうネタバレフルスロットルでいくので、知りたくない人はこのページを閉じてくださいね!
Contents
あらすじ
第一巻 The Three Body’s Problem
文化大革命の頃、葉文潔という女の子が地獄のような体験をし、人類に絶望
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あるとき奇跡的に、地球外の生命体からシグナルを受ける
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メッセージを送り返す。「どうぞこの腐った地球の人間たちを滅ぼしてください」
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ガチで宇宙人が攻めてくる、人類滅亡まで400年
第二巻 The Dark Forest
宇宙人は、智子(ソフォン, sophon)という、大きさは原子ほどで11次元構造のわけわからん超科学的物体を先あたって地球に送っていた
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この智子のせいで、人類の行動はすべて筒抜け、科学技術の発展も歯止めをかけられてしまう(何を言ってるかわからねぇと思うがそういうことだ)
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唯一つ、智子が見抜けないもの、それが人間の思考
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地球の運命は、四人の壁面者(WallBreaker)に託される
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壁面者の一人、Luo Ji(英語だったんでどういう漢字なのかはわからんす)が人類を救う方法を思いつき、「魔法」をかける。結果が出るまで50年ぐらいかかるよっ!
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冬眠技術の進歩によって、Luo Jiは未来に飛ばされる
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100年ぐらい経過。Luo Ji が長い眠りから目覚めると、地球の人間たちは平和そうにしていた。Luo Jiの魔法は効かなかったらしい。思わぬ地球の文明の進化によって、宇宙人側を上回った?
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宇宙人がビビって和平交渉をしようとぬかしてきたが、実はそれはブラフ
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地球の科学技術とは比べ物にならないレベルの違いを見せつけ、人類は阿鼻叫喚
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Luo Jiがかけた魔法が効力を発揮していたことが判明
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Luo Jiが救世主のごとく崇め奉られる
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Luo Jiがかけた魔法によって、宇宙人側も本気の本気で降参。和平交渉を結ぶことに
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ハッピーエンド? Luo Jiはまた冬眠に入る
第三巻 Death’s End
Cheng Xin (程心) とYun Tianming (云天明)という二人の人物についての回想(サンキューウィキペディア!)
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Cheng Xin (程心)は、物理学専攻でPh. Dもとった、才色兼備の女性。Yun Tianming (云天明)は、ガンに侵されて安楽死をしようとしている男性。学生時代にCheng Xin (程心)と知り合った。Cheng Xin (程心)に死ぬほど片思い
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Cheng Xin (程心)は気にもかけず(よくあるぅーーー)
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Yun Tianming (云天明)が入院生活を送り、ついに安楽死をしようとするその頃、彼のもとに大金が入る
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なんとその大金で惑星を買い、Cheng Xin (程心)に匿名でプレゼント。(このとき、時系列としては第二巻の途中ぐらい)
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なんやかんやで300年ほど経過
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気づいたら人類滅亡エンド5秒前。後はもうあらすじ書くの面倒なんですいません
感想
Yun Tianming (云天明)が、安楽死で逝く寸前にCheng Xin (程心)が駆けつけてくるんですが、Yunにとっては、え、まさか惑星をプレゼントしたのが俺だと知って来てくれたの?と一瞬舞い上がりそうになるわけです。
が、現実では、というよりは小説の世界ですが、非モテの男の扱われ方はとことんみじめです。彼女が駆けつけてきた理由は、彼女が関わっているプロジェクトのために必要なYunの新鮮な脳です。
つまり、どうせ安楽死をするなら、人類にとって利益をもたらすプロジェクトに脳みそを寄付してくれないか、みたいな感じですね。
同じ男性としては、ここを読んでいて本当に胸が苦しかったですwww
とはいえ、この二人の関係が、その後400年ぐらいにおける人類にとっての重要なものであり、同時に第三巻「Death’s End」のキーポイントとなってきます。
ちなみに、この第三巻、日本語訳だと「死神永生」というSF小説とはかけ離れた超中二チックなタイトルなんですねw
というよりは、もともとの中国でのタイトルが「死神永生」なんですけど、なんと痺れるタイトルでしょうか。
第三巻では、第二巻で主役的な立ち回りだったLuo Jiも登場します。冬眠技術(冬眠はHibernateですよ!TOEFLとかで頻出)と寿命の伸びによって、最後らへんではもうわけわからんことになりますが、入り乱れるカオスぐあいが楽しいです。
Cheng Xin (程心)とLuo Jiは大体同世代の人間なんですけど、かたや30歳ぐらい、かたや180歳ぐらいみたいなw
途中で、Yun Tianming (云天明)が3つの童話を語ります。
これが、地球滅亡を防ぐ鍵となるんですが、童話内で直接その方法が語られているわけではなく、比喩だったり象徴だったりと様々な技法を使って、一見しただけではそのヒントがわからないようになっています。
この童話が非常によくできていて面白かったですね。謎解き感が半端なくてワクワクしました。
Death’s Endは全部で600ページぐらいあるんですが、最後の100ページぐらいからいきなり物語のスケールがインフレします。文字通り、ビッグバンと言ってもいいでしょう。
ドラゴンボールでいうと、天下一武闘会のあたりからいきなり魔人ブウと戦うことになったみたいな。凄まじいスキップぐあい、話の持っていき具合に圧倒されました。
このあたりは、面白さというよりは、不思議さに満ちていましたね。どこまで話は広がっていくんやろうと。
そして最後、宇宙の終焉と開闢に立ち向かうというぶっ飛び具合を発揮して物語は終わります。
多読的な観点から分析
僕は「三体」シリーズを、第一巻は日本語で、第二巻、第三巻は英語で読みました。が、思ったよりは難易度に差はなかったかなと。
大きく違うとしたら、それは読むスピードですね。ここは圧倒的に違う。
最近思うんですけど、もはや日本語に触れるときって、「読」んでないんですよね。「見」てるんですよね。
内容をさっと掴みたいときは、パッパッとページをめくっていく感じ。ニュースをチェックするときもそうですね。
一覧をぱーっと見ていって、こんなニュースがあるのかーと。そこから、面白そうなものだけ別タブで開く。で、スーっとスクロールしながら詳細をなんとなく掴む。
こんな感じの方が多いと思うんですけど、これが英語になると全然違う。パッと見ただけじゃ全然意味がわからないから、一言一句読んでいかないといけないっていう。
これが母国語と外国語を読むときの最も大きな差だなーと感じています。
これが仮説①ですね。つまり、母国語はパっと見るだけでイメージが掴める。外国語ではそんなことできない。
これはある程度真実だと思うんですが、僕にはもう一つ仮説があります。
でそれは、日本語はイメージを喚起させやすい言語であり、英語はそうではない、というものです。
まあ考えてみれば当たり前ですね。英語は基本的にアルファベット26文字、表音文字のみです。
つまり、文字が含む情報量がめちゃめちゃ小さいんですよね。つまり、同じ空間に詰め込める情報量が少ない。
だからこそ、イメージ喚起性が小さい。
これに対し日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット、なんでもござれな言語です。ひらがな、カタカナの表音文字が約50文字ずつに加え、表意文字の漢字が2000~3000字。
文字が含む情報量が、英語に比べてめちゃめちゃ多いんですよね。だからこそ、文字をパッと見ただけで、ある程度その意味を想像することができるわけです。
これもある程度は真だなと思います。なんでも、英語より日本語のほうが短い文章で同じ情報を伝えられるそうです。
Yahooのアメリカ版サイトと日本版サイトを比べてみましょう。
USA
JAPAN
アメリカのサイトのほうが、画像が多いことに気づくと思います。これに対し日本版サイトでは、基本文字ば主体。
これも僕の主張を裏付けてくれます。その主張とはつまり、英語より日本語のほうが単位あたりの情報量が多く、そしてイメージ換気性が強い。
英語に限らず、外国語ができるようになればなるほど、母国語との違いに気付けるようになりますし、言語の持つ魅力というものもよくわかってきます。
でそれがどんどん進んでいくと、今度は、言語に根付いた文化とか概念とかがわかるようになってきて、比較言語的、比較言語文化的な見方ができるようになります。
比較言語的というのは、例えば、日本語と韓国語は似てるよねとか、現代の英語は古代のラテン語に始まり、ローマとかドイツとかフランスとか、その他大勢の雑多な文化の受け皿になった言語だよねとか。
often = ドイツ語由来で、frequently = フランス語由来だよね、みたいな。
比較文化というのは、例えば日本語は仏教に関連した言葉が多いけど、英語はキリスト教に関連した言葉がおおいよねーみたいな。
英語の知識がつくにつれて、こういう知識がめちゃめちゃ溜まってくるんですよ。で、これが超面白い。
このあたりは、もっとガッツリ掘り下げたいので、今度別の記事にでもまとめようかなと思ってます。
という感じでした!
超重厚な壮大SF小説、難易度はもちろん高いです。が、必死こいて読む価値はあると断言できるシリーズです。多読を嗜むものならぜひ一度、挑戦してみてはいかがでしょうか!
以上!
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